公開日: 2024.06.19

外国暗号資産交換業者の登録要否について

1.外国暗号資産交換業者等からの問い合わせ

外資系企業や外国暗号資産交換業者(外国において暗号資産交換業に相当するライセンスを取得している事業者)から、日本国内での暗号資産交換業の登録(資金決済に関する法律(以下「資金決済法」といいます。)63条の2)要否についてお問い合わせをいただくことがあります。

結論としては、日本の居住者を相手に暗号資産交換業に該当するサービスを提供する場合のほか、外国暗号資産交換業者であっても、ホームページ等に掲載する広告等において、日本の居住者を顧客対象から除外する旨明記するなど、日本の居住者との取引につながらないような合理的措置を講じていない限り、暗号資産交換業の登録が必要となります。

2.暗号資産交換業登録を要することとなった経緯

まず、平成29年4月1日に施行された資金決済法の改正に伴い、暗号資産交換業者は金融庁・財務局への登録が義務付けられました。また、令和2年5月1日に施行された資金決済法等の改正法(※)により、暗号資産の売買等を行わず、利用者の暗号資産の管理等のみを行う事業者も登録を要することとなりました。

外国暗号資産交換業者においては、資金決済法63条の22により、国内にある者に対する暗号資産交換業の「勧誘」が禁止されています。「勧誘」行為が禁止される趣旨は、外国暗号資産交換業者が日本の居住者に対しサービス提供することは容易であることから、サービス提供本体を阻止するため、それ以前の段階での行為を規制する点にあります。

※「情報通信技術の進展に伴う金融取引の多様化に対応するための資金決済に関する法律等の一部を改正する法律」(令和元年法律第28号)。当該改正法においては、暗号資産のデリバティブ取引等が金融商品取引法において規律されることに係る規定の整備もなされ、暗号資産のデリバティブ取引を行う業者も登録が必要となりました。

3.金融当局が示す外国暗号資産交換業者に対する基本的考え方

金融庁の「事務ガイドライン(第三分冊:金融会社関係 16 暗号資産交換業者関係)」に以下の記載があります。

Ⅱ-5-1 外国暗号資産交換業者の勧誘の禁止

外国暗号資産交換業者(法に基づく登録を受けた者を除く。以下、Ⅱ-5-2において同じ)は、法令に別段の定めがある場合を除き、国内にある者に対して、暗号資産交換業に係る取引の勧誘をしてはならない。
(注)外国暗号資産交換業者を含め、海外に存在する事業者が国内にある者との間で暗号資産の交換等を業として行う場合、当該事業者の行為は、暗号資産交換業に該当することに留意する。

Ⅱ-5-2 外国暗号資産交換業者によるインターネット等を利用したクロスボーダー取引

外国暗号資産交換業者がホームページ等に暗号資産交換業に係る取引に関する広告等を掲載する行為については、原則として、「勧誘」行為に該当する。
ただし、以下に掲げる措置を始めとして、日本国内にある者との間の暗号資産交換業に係る取引につながらないような合理的な措置が講じられている限り、日本国内にある者に向けた「勧誘」には該当しないものとする。

⑴ 担保文言

日本国内にある者が当該サービスの対象とされていない旨の文言が明記されていること。 上記措置が十分に講じられているかを判断する際には、以下に掲げる事項に留意する必要がある。

  1. 当該担保文言を判読するためには、広告等を閲覧する以外の特段の追加的操作を要しないこと。
  2. 担保文言が、当該サイトを利用する日本国内にある者が合理的に判読できる言語により表示されていること。

⑵ 取引防止措置等

日本国内にある者との間の暗号資産交換業に係る取引を防止するための措置が講じられていること。
上記措置が十分に講じられているかを判断する際には、以下に掲げる事項に留意する必要がある。

  1. 取引に際して、利用者より、住所、郵送先住所、メールアドレス、支払い方法その他の情報を提示させることにより、その居所を確認できる手続を経ていること。
  2. 明らかに日本国内にある者による暗号資産交換業に係る取引であると信ずるに足る合理的な事由がある場合には、当該者からの注文に応ずることがないよう配意していること。
  3. 日本国内に利用者向けのコールセンターを設置する、或いは日本国内にある者を対象とするホームページ等にリンクを設定する等を始めとして、日本国内にある者に対し暗号資産交換業に係る取引を誘引することのないよう配意していること。

また、以上に掲げる措置はあくまでも例示であり、これらと同等若しくはそれ以上の措置が講じられている場合には、当該広告等の提供は、日本国内にある者向けの「勧誘」行為に該当しないものとする。

なお、以上に掲げるような合理的な措置が講じられていない場合には、当該広告等の提供が日本国内にある者向けの暗号資産交換業に係る取引の「勧誘」行為に該当する蓋然性が極めて高いことから、当該外国暗号資産交換業者は、日本国内にある者との間で勧誘を伴う暗号資産交換業に係る取引が行われていない旨を証明すべきである。

4.暗号資産交換業登録に関する雑感

以上より、外国暗号資産交換業者において、日本の居住者に対する暗号資産交換業に係る取引の「勧誘」が禁じられていること、そして、ホームページ等に広告等を掲載する行為については、取引につながらないような合理的措置を講じていない場合、日本の居住者との間で「勧誘」を伴う取引が行われていると推定されてしまうため、暗号資産交換業の登録を避けるのは難しいことがわかりました。

もっとも、近時、暗号資産交換業登録のハードルは非常に高いものとなっています。令和6年5月31日時点で暗号資産交換業者は全29社しかなく、令和4年10月を最後にここまで1年半以上もの間、新規登録業者はありません。

情報通信技術を応用し生まれた暗号資産は、既存の貨幣にはないメリットが多い反面、他の金融商品と比較して価格変動やセキュリティなど高度のリスクがあり、求められるAML/CFT(マネー・ローンダリング及びテロ資金供与対策)も厳しいものとなります。そのため、金融当局は、「暗号資産交換業者の登録審査プロセス」に基づき実質面を重視した深度ある審査を行うこととし、暗号資産交換業に係る取引の適切性及び取り扱う暗号資産の適切性等について申請者に対し詳細な説明を求めるなど、厳しく審査している(厳しく審査せざるを得ない)ものと思われます。

JVCEAの「外務員資格を有し「現場」を知る行政書士が、暗号資産交換業の登録・届出やコンプライアンス業務に関するご相談をお受けいたします。

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